今年のお盆は猛烈な暑さが続いていますが皆さん体調管理は万全でしょうか。
さて、今回は『敷金』のお話です。賃貸の時には皆さんもお聞きになったことがあるのではないでしょうか?
もっとも、最近では敷金0円の物件もおおくありますので払ったことがない。という方も多いかも知れませんね。
今回は不動産の売買においてこの敷金の扱いがどうなるかという所を解説していきます。
それでは行きましょう!
そもそも敷金とは
そもそも敷金とは何か?といったところから見ていきましょう!
敷金は2020年の民法改正に伴い、下記のように明文化されます。
「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう」
改正民法 第622条の2
ざっくり言うと「名目はさておき、賃貸する上で入居者が大家さんに支払うお金の保険として預けるお金です。」みたいな感じです。
ようは家賃の滞納であったり、自然損耗以外の部屋の修理にかかった修繕費など入居者が支払う分のお金を先に大家さんに預けるということです。
万が一、上記のような滞納などがあった際には預かっている敷金から回収しますよ。といった具合ですね。
重要なのは預かるというところです。
預かっているだけなので退去の際、何も問題が無ければ全額戻ってきます。
一般的に敷金の金額は家賃の○ヶ月分といった具合に定められます。
冒頭にも書いたとおり、最近では敷金0円という物件も増えてきました。
これは初期費用の敷金を0円にすることで入居者さんに入居してもらうことを優先している物件です。
物件のグレードが高ければ当然敷金を設定している物権も多いです。
体感ではワンルームなど単身者向けの物件は敷金を取るところは減ってきています。逆にファミリー層が住むような広い間取りの物件は敷金を取るところが多いですね。
同じく、賃貸で入居する際の初期費用で【礼金】という似たような項目もあります。
礼金を取る地域は限られており主に関西圏などで見かけます。
(関東の方が関西の物件の賃貸を見られるときにはよくびっくりされます。)
礼金は敷金とは違い、完全に大家さんに支払うだけのお金です。
敷金のように戻ってきません。本当にただ支払うだけのお金です。
売買のときは処理は?
では大家さん(物件のオーナー)が入居者がいる状態のアパート1棟を売却するときにはこの預かっている敷金はどのように処理(清算)されるのかを見てみましょう。
一般的に敷金を引き継ぐ方法として【売買代金との相殺】という方法が取られます。
どういう方法かといいますと、
5,000万円の1棟アパートに預かっている敷金が合計で100万円あったとします。
買主が売主に5,000万円を払って、売主が買主に敷金の100万円を払うのではなく、
買主が売主に4,900万円(物件代金5,000万円-敷金100万円)を支払う。
という方法です。
なぜかといいますと、物件代金と敷金を別々に支払ってしまうと支払い回数が多くなりどうしても振り込みのミスが出やすく、着金を確認するまでの時間も余計にかかってしまうためです。
※この【売買代金との相殺】は家賃や経費、固定資産税の日割り等あらゆる清算のときにも使われます。
上記は預かっている敷金を売主から買主に渡す場合の清算です。
実際の売買では敷金を渡さない場合もあります。
売買の場合、敷金の取り扱いについては分かりにくいのですが下記のように分けて考えると割と分かりやすいと思います。
- 預かっているお金をどうするか→敷金のこと。
- 入居者に返すお金をどうするか→賃借人への返還債務といいます。
この敷金と返還債務の処理の仕方によって清算方式の呼び方が変わります。
では、敷金を売主から買主に渡す場合と渡さない場合で呼び方とどういったことが起こるかを見てみましょう。
東京(関東)方式
この方式が常識的ではないかと思います。(少なくとも筆者は)
敷金→売主から買主に渡す。
返還債務→売主から買主に移る。
預かっている敷金を売主が買主に渡すので入居に対しての返還債務も買主に移り、実際に入居者が退去する際には買主さんが預かっていた敷金を返します。
この方式は主に東京方式や関東方式といわれています。
大阪(関西)方式
これはちょっと買主さんは「えっ!?」となるかも知れません。
敷金→売主から買主に渡さない!(売主がもらってしまう)
返還債務→売主から買主に移る。
敷金は売主が預かっているお金のはずなんですがなぜか売買の時に売主が回収して、もらってしまう方式です。
本来、返さないといけないお金が買主に渡っていないわけですから買主は自己資金から入居者に返さないといけません。
この方式は大阪方式や関西方式といわれています。
その名のとおり、主に大阪でこの方式が取られていました。しかし明確に地域で分かれているというよりは売主の考え方によるところが大きいです。
これは慣例といいますか、習慣といいますか、「そういうもの」で片付けられており、現在も多くの売買でこの大阪方式は取られているのが現状です。
持ち回りとは?
では、【持ち回り】とはどういったことかといいますと。
この【持ち回り】という言葉にはかなり省略されている(抜けている)ことばが隠れています。
正しくは・・・
入居者への返還債務のみ持ち回り です。
返還債務のみという事は敷金は持ちまわらない(渡さない)ということです。
つまり「大阪方式ですよ。」ということですね。
この言葉の発生した経緯などは知りませんが恐らく【大阪方式】だと、購入検討者からは嫌な印象を与えてしまうのでどこかの不動産業者が印象が悪くない言葉を考えていい始めたのではないかと勝手に推測しています。(本当に勝手にですw)
「敷金は持ち回りです。」と言えばなんとなく「敷金も回ってくるんだな。」って思ってしまいますし聞いた感じ、あまり悪い印象は受けないのではないでしょうか?
この「持ち回り」という言葉は物件概要書の敷金欄にもシレっと書いています。
筆者はこの「分かりにくい表記を使って購入者の誤解を招く」ようなやり方は不動産業界の悪しき慣習だな。とつくづく思います。
まとめ
今回は敷金の意味から、売買のときのいろいろな清算方法、そして【持ち回り】という言葉の意味を解説しました。
実際に関西エリアを中心に狭くないエリアでこの【持ち回り】での敷金の清算方法は用いられています。
この【持ち回り】という清算方法自体に善悪はありません。買主がいくら主張したところで売主がそのように条件を提示しているなら飲むしかないですし、そもそも納得できないなら極端な話、その分の指値(値引き交渉)を入れれば済む話です。
しかし、問題なのは【持ち回り】の意味を理解せずに契約をして引き渡しを受けてしまえば想定していなかった返還債務が突然やってくるということです。
業者も悪い業者であれば「持ち回りって言いましたよね?」と開き直ってきます。
皆さんはそういったことの無いように「持ち回りという事は敷金は引き継がれないんだな、しっかりと準備しておけるかな?」と対策を考えることの出来るように願っています。
そして、このブログでは筆者の脱サラにいたるまで(現在進行中)の資産運用の公開と筆者の不動産業界で知識を共有し今回の【持ち回り】のような誤解がなく、適切な不動産投資の判断できるようになるための情報の発信を続けていきますのでよろしくお願いします。
それでは今回はこのへんで。